私たちの時間は常に流れている。
そこには思い出になってしまう
寂しさと生活に向き合う
愛しさが同居している。
だから私たちは
強く生きていける。
MOVIE WORKS
作品紹介
彼方から歌がきて、存在で響く。
「はじめてここに来たとき、誰が障がいのある人なのか、職員なのかわからなかった。」
群馬県前橋市にある<障がい福祉サービス事業所・麦わら屋>をとりまく人たちは笑いながら言う。
一歩踏み入れるとその理由がわかる。四六時中、歌う人。突然、飛び跳ねる人。芸術的な寝相で横たわる人。話し言葉が全てキャッチコピーな人。スーパーのチラシで見た鰻重を粘土で作る人。ひたすら蝋燭の絵を描く人、雨を止めようとする人…。永遠に続く夏休みのような時間が流れている。
ここには管理がない。言語で意思疎通できないからと優劣をつけられることがない。身体から発するものを善悪で分けるジャッジメントがない。あるのは、誰もが「存在することですでに喋っている」という認識だけだ。だから麦わら屋に居ると、なにが障がいなのか、なにが普通なのか、一般社会とは何なのか、わからなくなる。目の前の他者が彼方から来たかのようにわからない。でも、そもそも他者のことなんてわかるわけがない。わからないまま、ともに笑う。笑うことで解かれていく。自分が歌うから世界も歌うのかもしれない。
監督 松井至
